前節<(学習の目的)
望ましい国民所得の水準と、実際の経済状態のズレをみます。インフレは総需要が多すぎる状態で、デフレは総需要が不足している状態です。このときに発生している総需要のズレが、それぞれインフレ・ギャップとデフレ・ギャップです。
完全雇用
- 「望ましい国民所得」の水準には、さまざまな議論があります。
- ここでは、ひとつの目安として「失業がない」状態を考えます。
- ここで想定している失業とは、「働きたくても仕事がない」状態です。
- このような失業を「非自発的失業」といます。
「非自発的失業」が存在しない状態を「完全雇用」(full employment)といいます。
完全雇用国民所得
「完全雇用」が達成されている国民所得の水準を「完全雇用国民所得」(Yf)といいます。
- この状態では、まず「財市場」が均衡しています。
- 同時に「労働市場」が完全雇用の状態にあります。
- 財市場と労働市場という複数の市場の関係をみる必要がありますので、第4章の「労働市場」でさらにくわしく分析していきます。
インフレとデフレの考え方
- この望ましい国民所得の水準である「完全雇用国民所得」と、実際の国民所得の水準が一致すれば問題はないのですが、現実にはズレが生じます。
(デフレーション)
- たとえば不景気のときは失業者が増え、賃金も低い水準になります。
- 物価も下落します(デフレーション〔デフレ〕)。
- これは、実際の均衡国民所得(Y*)が完全雇用国民所得(Yf)の水準を下回っている状態です。
(インフレーション)
- 逆に、景気が過熱しすぎると、労働力に対する需要が増加しすぎて、賃金の高騰につながったりします。
- 物価も上昇します(インフレーション〔インフレ〕)。
- これは、実際の均衡国民所得(Y*)が完全雇用国民所得(Yf)の水準を上回っている状態です。
インフレ・ギャップ
経済がインフレの状態のときは、
「均衡国民所得(Y*)>完全雇用国民所得(Yf)」となっています。
- これは財に対する需要が完全雇用の水準に比べて「あり過ぎる」状態です。
この需要の差を「インフレ・ギャップ」といいます。
- 過熱した経済状態を抑える政策をおこなう必要がでてきます。
デフレ・ギャップ
経済がデフレの状態のときは、
「均衡国民所得(Y*)<完全雇用国民所得(Yf)」となっています。
- これは財に対する需要が完全雇用の水準に比べて「足りない」状態です。
この需要の不足分を「デフレ・ギャップ」といいます。
- 経済が停滞している状態なので、景気を刺激する政策をおこなう必要がでてきます。
45度線分析での注意点
- これらのインフレ・ギャップとデフレ・ギャップについては、45度線分析で説明しますが、これには注意が必要です。
- インフレ・ギャップとデフレ・ギャップの「ギャップ」とは、あくまでも総需要(Yd)が多いか少ないかの問題です。
- グラフでは縦軸方向の差です。
- 横軸方向の差はあくまでも、均衡国民所得(Y*)と完全雇用国民所得(Yf)の差になります。
- これは計算問題などでも間違いやすいので気をつけてください。
→ 次は「政府部門と海外部門をふくむモデル」です。ここでは保留としておきます。
1.財市場
│国民所得とは何か?│三面等価の原則│有効需要の原理│国民所得の決定│乗数効果│「45度線」分析│インフレ・ギャップとデフレ・ギャップ│政府部門と海外部門をふくむモデル│