5-3.寡占

5-2.複占 < 5-3.寡占 > 5-4.独占的競争

(学習の目的)
寡占の代表的なモデルとして、屈折需要曲線をもちいた説明をまなびます。

〔ミクロ5-3〕寡占

0:00 はじめに / 0:30 寡占 / 0:55 価格の硬直性  /1:28 (1)屈折需要曲線 / 3:33 価格を下げた場合 / 6:11 価格を上げた場合 / 7:50 不連続な限界収入曲線 / 8:20 図を丁寧に / 15:37 価格が硬直的な場合 / 17:33 価格が変化する場合 / 18:55 (1)屈折需要曲線のまとめ / 19:09 その他の理論 /19:35 (2)フルコスト原理 / 20:27 (3)参入阻止価格 / 21:16 (4)売上高最大化


寡占

少数の企業が「価格支配力」をもっている状態を「寡占」といいます。

  • この「寡占」を説明する考え方はいくつかあります。ここでは、「屈折需要曲線」を用いて説明します。

価格の硬直性

  • 需要と供給の「不均衡」が発生した場合、「完全競争」市場では「価格調整」などを通じて「均衡」状態に至ります。
  • これは「価格調整」のプロセスが柔軟性に富んでいる状態です。
  • 「不完全競争」市場の「寡占」状態の場合、この「価格調整」が柔軟におこなわれない場合があります。
  • これを「価格の硬直性」といいます。

屈折需要曲線

屈折需要曲線」は、この「価格の硬直性」を説明する方法です。

  • とくに「費用」面の変化(つまり供給曲線のシフト)に対して価格が「硬直的」である状態を説明します。

前提

  • ある財を「少数の企業」が生産している状態を考察します。
  • そして、一定の価格で、財の「生産」(供給)がされているとします。

(考え方)

  • 世の中には様々な商品がありますが、それぞれの商品の価格には「およその相場」というものがあります。これは現実の経済が「完全競争」市場ではないからです。
  • 「完全競争」市場では、「企業」は「無数」に存在します。これは「無限」を想定していると考えてください。世の中には多くの企業がありますが、それはどんなに多くても「無限」ではありません。
  • こう考えると、現実の企業は「寡占」状態にあるともいえます。

この「寡占」状態で、ある企業が「価格」を変化させた場合、他の企業がどのような行動をとるかをみていきます。

  • 「価格」の変化は、「価格を下げる」場合と、「価格を上げる」場合の2通りが考えられますが、他の企業のとる行動は、それぞれ異なってきます。

価格を下げた場合

  • ある企業が「価格を下げる」場合、この動きに対して、他の企業も「価格を下げ」ます
  • なぜならば「安売り競争」に負けるわけにはいかないからです。
  • この場合、最初に「値下げ」をした企業の販売量はそれほど増えません。
  • 「寡占」状態で、ある価格から「値下げ」をする場合、「需要」への影響は小さくなると考えられます。
  • よって、「需要の価格弾力性は小さい」ことになり、「需要曲線の傾き」ははじめの価格よりでは「」になります。

価格を上げた場合

  • これに対して、ある企業が「価格を上げる」場合、この動きに対して、他の企業は「価格を変化させない」と考えられます
  • この場合、最初に「値上げ」をした企業の販売量は減少します。
  • 「寡占」状態で、ある価格から「値上げ」する場合、「需要」への影響は大きくなると考えられます。
  • よって、「需要の価格弾力性は大きい」ことになり、「需要曲線の傾き」ははじめの価格よりでは「緩やか」になります。

不連続な形の限界収入曲線

以上のことから、「はじめの価格」を境にして、需要曲線は「屈折」した形になります。

  • 「寡占」企業は「価格支配力」をもつため、利潤最大化条件は「限界収入=限界費用」(MR=MC)です。
  • 「屈折需要曲線」について「限界収入」をあらわすと、その形は、需要曲線の屈折した点に対応する「消費量」において「不連続」の形になります。

「限界費用」曲線(つまり供給曲線)がこの「不連続」なエリア内でシフトした場合、「消費量と価格は不変」です。

  • つまり、「価格の硬直性」が説明できます。
  • これに対して、「限界費用」曲線が「不連続」でないエリアにシフトした場合は、価格は変化します。

(他の寡占の理論)

「寡占」の理論は「屈折需要曲線」のほかに「フルコスト原理」や「参入阻止価格」などがあります。


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