5-2.複占

5-1.独占 < 5-2.複占 > 5-3.寡占

(学習の目的)
独占は1社ですが、複占では2社以上のケースを分析します。計算問題としてはクールノー均衡がよく出されます。

〔ミクロ5-2〕複占

0:00 はじめに / 0:19 複占とは / 0:28 3つのパターン / 5:13 (1)クールノー均衡 / 6:19 反応関数 / 7:53 式の展開 / 12:22 生産量の求め方 / 14:25 (2)シュタッケルベルク均衡 / 20:38 (3)ベルトラン均衡(保留)


複占

  • 複占」とは、企業が2社以上あるケースです。
  • 「独占」の場合は1社ですから自社のことだけを考えていれば十分です。
  • これに対して「複占」の場合は、「他者」の行動に反応して生産をおこないます。
  • 「複占」企業は「独占」企業と同じように、価格支配力をもっておりますので、「利潤最大化条件」は「限界収入=限界費用」(MR=MC)となります。

複占にはいくつかのパターンがあります。

(相手の生産量に反応する)

  • クールノー均衡…お互いに相手に対する影響力がある。
  • シュタッケルベルク均衡…影響力に差があり、一方がもう一方に追随する。

(相手の価格に反応する)

  • ベルトラン均衡…上の2つは相手の生産量に影響を受けるが、ベルトラン均衡では相手の価格に反応する。

5-2-1.クールノー均衡

「クールノー均衡」とは?

「複占」市場で、2社の企業がともに相手に対する影響力がある場合を「クールノー均衡」といいます。

  • 「クールノー均衡」では、各企業は相手の企業の「生産量」を考慮に入れて「利潤最大化」行動をとります。
  • このことを、相手の企業の「生産量を所与とする」と表現します。
  • この、相手の企業の「生産量」と自社の生産量」の関係を表す関数が「反応関数」です。
  • 設問では各企業についてこの反応関数を求めて、連立方程式として解くことによって生産量を求めることができます。

(以下のプロセスは例題を解いて確認することをおすすめします。)

反応関数の求め方

「反応関数」は、「利潤最大化条件」の「限界収入=限界費用」(MR=MC)から求めることができます。

  • まず「限界収入」(MR)を求めます。
  • 「限界収入」(MR)は、「総収入」(TR)を「生産量」で微分して求めることができます。
  • 「総収入」(TR)は「価格(P)×生産量」ですが、この「価格」(P)は、企業が「生産量」を決めることによって、決まります。

需要関数を代入する

  • この「生産量によって価格が決まる」関係は、「需要関数」を変形させてあらわします。
  • 「需要関数」は、市場における消費行動について、「価格」と「消費量」の関係をあらわしたものです。
  • この「需要関数」を「価格(P)= ~ 」の形に変えます。これは、「消費量が決まると価格が決まる」関係をあらわしています。
  • 「総収入」(TR)は、「価格(P)×生産量」です。
  • この式の「価格」(P)に、「需要関数」の右辺の式を代入すれば、「生産量」を用いて「総収入」(TR)を求めることができます。

(式の展開)

  • 「総収入」(TR)を式であらわしたら、次に、この式を「生産量」で微分することによって「限界収入」(MR)を求めることができます。
  • 「総費用」(TC)関数が与えられている場合、これを「生産量」で微分して「限界費用」(MC)を求めます。
  • 利潤最大化条件の「限界収入=限界費用」(MR=MC)に代入し、式を整理すると、これが「反応関数」になります。

クールノー均衡の生産量の求め方

  • 「クールノー均衡」の場合、相手の企業についても同様のプロセスで、「反応関数」を求めます。
  • そしてこの2つの式を、連立方程式として解けば、「クールノー均衡」における最適な生産量を求めることができます。
  • 反応関数」をグラフにかく場合は、縦軸と横軸にそれぞれの企業の生産量をとります。
  • 「クールノー均衡」では、2つの企業の反応関数の「交点」で、最適な「生産量」が決まります。
  • この「交点」を「クールノー均衡点」といいます。

5-2-2.シュタッケルベルク均衡

  • 「クールノー均衡」は、企業が相手の企業の「生産量を所与」として、自らの「生産量」を決定しました。
  • これに対して、次にまなぶ「シュタッケルベルク均衡」は、企業間の行動に差がある場合を分析します。

「シュタッケルベルク均衡」とは?

「シュタッケルベルク均衡」は、「複占」市場で、2社の企業が、「先導者」(リーダー)と「追随者」(フォロワー)で構成されている場合です。

追随者

  • 「追随者」は、「先導者」の「生産量を所与」として利潤最大化をはかります。これは「クールノー均衡」の場合と同じです。

先導者

  • これに対して「先導者」は、自分の行動に対して「追随者」が後追いで「生産量」を決めることがわかっています。
  • つまり、相手の行動パターンが読める状態です。
  • よって、「先導者」は「追随者」の「反応関数」を読み込んで利潤最大化をはかります。

計算問題の解き方

  • まず「追随者」の「反応関数」を求めます。
  • 続いて、「先導者」の「利潤関数」に「追随者」の「反応関数」を代入します。
  • この「先導者」の「利潤関数」を「生産量」で微分して、「イコール・ゼロ」(=0)とおき、「利潤が最大」となる「生産量」を求めます。
  • この「先導者」の「生産量」を、「追随者」の「反応関数」に代入して、「追随者」の「生産量」を求めます。

(これも例題を解いて確認することをおすすめします。)


ベルトラン均衡(保留)

「複占」市場で、2社の企業が、相手の「価格を所与」として利潤最大化をはかって価格を決定する場合を「ベルトラン均衡」といいます。


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