1-3.有効需要の原理

前節<(学習の目的)
ケインズ派の考え方の基本にある「有効需要の原理」をまなびます。


2つの考え方

経済学では、さまざまな考え方があります。マクロ経済学では、古典派とケインズ派の考え方をまなびます。

①古典派

アダム・スミスをはじめとした、「経済学」という学問をつくった人たちの考え方です。

  • 「市場(マーケット)」のしくみ(メカニズム)を説明しようとしています。
  • 「市場」メカニズムは、人間の力ではどうにもならないので、乱暴に言えば、「市場に任せておけば経済的な問題は解決できる」と考える人さえいます。
  • でも、現実の経済では、失業や倒産などのさまざまな問題がありますので、古典派の考え方は批判を受けます。
  • たとえばマルクスは、資本主義のしくみにもとづいて生産を行っても、いずれはこのしくみ自体が崩壊するであろうと考察しました。

これとは別の批判をしたのがケインズです。

②ケインズ派

1929年の世界恐慌をきっかけに、大量の倒産や失業が発生しました。

  • この頃から説得力を持つようになったのがケインズという経済学者の考え方です。
  • このケインズの影響を受けた人たちをまとめて「ケインズ派」といいます。

古典派VSケインズ派

マクロ経済学ではおもに、ケインズ派の考え方をまなびます。

  • ケインズ派の考え方の基礎には、「総需要が総供給を決定する」というものがあります。
  • これを「有効需要の原理」といいます。
  • これに対して、古典派は「供給されたものはすべて需要される」という「セイの法則」を取ります。

まずは古典派の考え方をみていきましょう。


セイの法則(古典派)

  • セイの法則とは、フランスの経済学者のジャン=バチスト・セイの言った「供給はそれみずからの需要をつくりだす」ということばに代表される考え方です。

かんたんにいえば、「作ったら→全部売れる」ということです。

  • 作りすぎたら、値段をどんどん下げていけば、全部売れるはずという考え方です。
  • 仕事が無い状態というのは、労働力の供給が需要を上回っていることですから、労働力に対する値段つまり賃金をどんどん下げていけば、全部雇われる、だから失業はない、という考え方です。
  • でも、現実には売れ残りも失業もあります。
  • これに対しては、「それは、何かが市場のメカニズムをゆがめているからだ」と考えます。
  • だから、「さまざまな規制を撤廃していこう」という流れになります。

有効需要の原理

これに対してケインズ派は、売れ残りや失業は「需要が足りないからだ」と考えます。

  • ただこの需要は、単に「欲しい」というものでは不十分です。
  • 金銭的な裏づけが必要です。
  • このような需要を「有効需要」といいます。
  • 失業が増加する不況のときは、この有効需要が不足しているわけですから、ある程度の金銭的裏づけのある「政府」が有効需要を増やすような「公共事業」をおこなうことが政策として考えられます。

ここからは、この「有効需要の原理」の考え方にもとづいて、一国の経済について式で表現していきます。


→ 次は「国民所得の決定」です。均衡国民所得の決定プロセスをまなびます。


1.財市場
国民所得とは何か?三面等価の原則│有効需要の原理│国民所得の決定乗数効果「45度線」分析インフレ・ギャップとデフレ・ギャップ政府部門と海外部門をふくむモデル