前節<(学習の目的)
国民所得を増減させるためには、何をどれくらい増減させれば効果があるかをみていきます。まずは、一定と仮定した「投資」(I)を変化させた場合の効果をみていきましょう。
変化分をみる
均衡国民所得は次の形で求まりました。
Y* = 1/(1-c1)・(C0+I0)
- 前提として、「C0」(基礎消費)と「I」(投資)は一定でした。
- もしこれらが変化したら、均衡国民所得(Y*)の値も変化するはずです。
式で「変化する」ことを表すには、「⊿」(デルタ:変化分を表す)を用いて、次の形で表します。
⊿Y* = 1/(1-c1)・(⊿C0+⊿I0)
投資乗数
ここで「投資」(I)の変化の影響をみていきます。
- 「基礎消費」(C0)は変化しないと仮定しますので、「⊿C0=0」となって、式はこうなります。
⊿Y* = 1/(1-c1)・⊿I0
ここから、投資を変化させたら(⊿I0)、その「1/(1-c1)」倍だけ均衡国民所得が変化する(⊿Y*)ことがわかります。
「倍」を表すのは掛け算つまり「乗法」ですので、この「何倍変化するか」を表す値を「乗数」といいます。
- ここでは、「投資を変化させたらどれだけ国民所得が変化するか」を表しているので、「投資乗数」といいます。
乗数効果
このように、「どれくらいの割合で国民所得が変化するか」をみたものを「乗数効果」といいます。
- 投資の変化の影響をみた場合は「投資乗数」です。
- この他に、政府支出の変化の影響をみたものとして「政府支出乗数」があります。
- 課税の影響をみたものは「租税乗数」です。
- 輸出の影響をみたものは「輸出乗数」です。
- これらについてはいずれ、モデルを複雑にしたときに考察していきます。
限界消費性向が高いほど・・・
次に、投資乗数「1/(1-c1)」と「限界消費性向」(c1)の関係をみていきましょう。
- 限界消費性向(c1)とは、「お金が入ったらどれだけ消費するか?」の割合です。
- どんどん使うほど、経済は活性化します。
よって、限界消費性向が高いほど、乗数効果は大きくなります。
数値をあてはめてみる
このことを、数値を当てはめてみてみましょう。
- c1=0.5 のとき → 1/(1-0.5)=1/0.5=2
- c1=0.9 のとき → 1/(1-0.9)=1/0.1=10
- 限界消費性向が低い「c1=0.5」のときの投資乗数は「2」です。
- これに対して、限界消費性向が高い「c1=0.9」のときの投資乗数は「10」です。
投資の増加分が同じであったとしても、限界消費性向が高い場合の方が、より国民所得の増加分も大きくなることがわかります。
→ 次は「45度線分析」です。この節で式で求めたものをグラフで表現します。
1.財市場
│国民所得とは何か?│三面等価の原則│有効需要の原理│国民所得の決定│乗数効果│「45度線」分析│インフレ・ギャップとデフレ・ギャップ│政府部門と海外部門をふくむモデル│