1-2.三面等価の原則

前節<(学習の目的)
GDPは、生産面、支出面、分配面の3つからみて等しいことを理解します。


三面等価の原則

三面等価の原則とは、国民所得が「生産」「支出」「分配」のいずれからみても恒(つね)に等しいことをいいます。

  • 生産されたもの、つまり誰かが作ったものが「付加価値」となるには、誰かがそれを買わなければなりません。
  • 買うこととはお金を使うことですから、これは「支出面」になります。
  • お金が使えるということは、それだけのお金が手もとに入ったということですから、これは「分配面」になります。

これらの関係は、式で整理しておくとわかりやすくなります。


①生産面

GDP(国内総生産)などの国民所得は、一般的に、「産出」yieldの頭文字をとって、「Y」という記号で表されます。

GDP = Y 


②支出面

「どう使うか」が支出面です。

  • まず、モノやサービスのためにお金を使います。これが「消費」(Consumption:C)です。簡単にいうと使い切ってしまうことです。
  • 次に、新たな生産のために、機械や設備を買う場合もあります。これが「投資」(Investment:I)です。
  • もっとも単純なモデル(※)では、この「消費(C)」と「投資(I)」だけで説明します。正確にはこの2つは民間のおこなう消費と投資です。
  • これに対して、政府が行う消費や投資は「政府支出」(Government expenditure:G)として表します。
  • さらに、海外との貿易が行われる場合は、「輸出」(Export:X)と「輸入」(Import:M)の差を加えます。
  • 輸出は海外からお金が入ってくるのに対して、輸入ではお金が海外に出ていきます。
  • 「輸出  輸入」のときは、貿易黒字が発生します。
  • 「輸出  輸入」のときは、貿易赤字が発生します。

これらをまとめると、支出面は次の形で表されます。
  = 消費 + 投資 + 政府支出 + (輸出-輸入)
  =  C  + IG + ( M


③分配面

分配面は、「どんな形でお金が入ってくるか」です。

  • 中学の公民では、収入(所得)について、①勤労所得、②事業所得、③財産所得の3つを学びました。
  • ①勤労所得とは、働いて稼いだ所得です。正確には、企業や役所に雇用されて手に入れた所得なので、「雇用者所得」といいます。
  • ②事業所得は、企業を経営して得た儲けです。「営業余剰」といいます。
  • ③財産所得は、資産を運用して得た所得です。
  • この三つの中には、それぞれ所得税や法人税などの「直接税」の支払い分が含まれています。
  • 消費税などの「間接税」はこれとは別に集計します。
  • これらは政府に入ってくるお金ですが、政府が出す「補助金」は、政府から出ていくお金なので、マイナスします。
  • この他に、GDP(国内総生産)などの「Gross(総~)」の集計では、「固定資本減耗」もプラスします。

これらをまとめると、分配面は次の形であらわされます。

 = 雇用者所得 + 営業余剰 + 財産所得 + ( 間接税 - 補助金 ) + 固定資本減耗

ただ、この形は、あまり計算問題には向いていないので、入門編では別の表し方を知っておいたほうがいいでしょう。

  • これは、「お金は何のために分配されるか?」で考えます。
  • 「使うため」の「消費」(C)、「貯めておくため」の「貯蓄」(Saving:S)、そして、「税金を払うため」(Tax:T)の3つです。

これらをまとめると、次の形になります。

  =  消費 + 貯蓄 + 税金
  =   C + S + T


三面等価の原則の式

これらの、生産面、支出面、分配面をまとめたものが次の式です。

Y  【生産面】
=  CIG+(M) 【支出面】
= T 【分配面】
この式を用いて、さまざまな計算問題が作れますので、まずは考え方を身につけておいてください。それぞれの記号が何を表すのかについては、計算問題などでは前もって示されていることが多いので、暗記よりも理解することがここでは大切です。


(保留)産業連関表
中間生産物なども考慮に入れて、国の生産の様子を、インプット面(投入)とアウトプット面(産出)から見ていく分析方法として、「産業連関表」分析があります。これは、ややむずかしいので、入門編では保留としておきます。


→ 次は「有効需要の原理」です。ケインズ派の考え方の基本です。


1.財市場
国民所得とは何か?│三面等価の原則│有効需要の原理国民所得の決定乗数効果「45度線」分析インフレ・ギャップとデフレ・ギャップ政府部門と海外部門をふくむモデル