前節<(学習の目的)
電気・ガス・水道などの固定費用が巨大なサービスでは、価格をどう決めればいいかを分析します。
費用逓減産業
- 電気・ガス・水道などの社会的なインフラは、財・サービスの供給を開始する以前に莫大な設備投資が必要になってきます。
- このように、生産量に関係なく必要な費用を「固定費用」(FC)といいます。
- 生産量1単位あたりの「固定費用」(FC)を「平均固定費用」(AFC)といいます。
- この「平均固定費用」(AFC)は「FC÷生産量」の形であらわされますので、財の生産量が増加するにつれて徐々に減少していきます。
- 電気・ガス・水道などの産業は、「総費用」(TC)に対して「固定費用」(FC)の占める割合が非常に高いため、「総費用」(TC)を生産量で割った「平均費用」(AC)も、生産量が増加するほど徐々に減少していきます。
このように、「固定費用」(FC)莫大なため、生産を増加するほど「平均費用」(AC)が減少する産業を「費用逓減産業」といいます。
自然独占
この「費用逓減産業」は、市場に任せておくと、「独占」状態に至ります。これを「自然独占」といいます。
- この場合、「利潤最大化条件」は「限界収入=限界費用」(MR=MC)となります。
- この「自然独占」によって、社会全体でみると「厚生損失」が発生します。
- 「費用逓減産業」は、人々の生活にとって不可欠な財・サービスを供給しておりますので、「政府」が「価格規制」をおこなう必要がでてきます。
限界費用で価格を規制
「自然独占」によって「厚生損失」が発生した場合、「価格=限界費用」(P=MC)となるように政府が規制することが考えられます。
- この場合、「パレート効率的」な資源配分が達成できます。
- なぜならばこれは、「完全競争」市場の場合と同じ価格だからです。
- しかしこの場合、企業側からみると、「赤字」(負の利潤)が発生します。
- なぜならば、「費用逓減産業」では、「利潤がゼロ」となる「平均費用」(AC)は、「限界費用」(MC)より高くなるからです。
- この場合、「赤字」分は、政府が「補助金」を補填するなどの支援をおこなう必要がでてきます。
- 結果として、企業は「経営努力を怠る」ようになってしまう可能性があります。
平均費用で価格を規制
別の価格設定の方法としては、「価格=平均費用」(P=AC)となるような規制が考えられます。
- この場合、「パレート効率的」な資源配分は達成できずに「厚生損失」が発生してしまいます。
- しかし、「赤字」(負の利潤)は発生しないため、「補助金」などは不要となり、「独立採算」が可能となります。