(学習の目的)
ゲーム理論では、自分の行動と他人の行動の間で影響を与え合うメカニズムについて分析します。はじめに、分析で用いられる枠組みを確認します。
ゲーム理論
- 「ゲーム」とは、一定の「ルール」にもとづいて、参加が自分の意思を決定し、お互いに影響を与え合う状況をいいます。
- 「ゲーム」における意思決定の主体を「プレーヤー」といいます。
- この「プレーヤー」の選択しうる行動を「戦略」(strategy)といいます。
- それぞれの「戦略」を選択したときの結果を「利得」(ペイオフ:pay off)といいます。
ナッシュ均衡
- 「プレーヤー」各人にとって、「最適な戦略」とは、自己の「利得」が最大になる「戦略」です。
このように、すべての「プレーヤー」が他の「プレーヤー」の「戦略」に対して、「最適な戦略」をとりあっている状態を「ナッシュ均衡」といいます。
- ただし、この「ナッシュ均衡」が、社会全体からみて望ましい状態かどうかについては考察が必要です。
ナッシュ均衡の性質
「ナッシュ均衡」とは、「ゲーム」の参加者全員が、与えられた「ルール」のもとで自分の「利得」が最大となる「戦略」を選択しあっている状態です。
この「ナッシュ均衡」には、以下の性質があります。
性質①「必ずしもパレート効率的とは限らない」
- 「ナッシュ均衡」は、あくまでも各人の行動の結果です。
- これが、社会全体からみて最適な「パレート効率的」な資源配分を達成する場合もありますが、そうでない場合もあります。
よって、「ナッシュ均衡は必ずしもパレート効率的とは限らない」といえます。
- この例としては、「囚人のジレンマ・ゲーム」があります。
性質②1つとは限らず、「複数存在する」こともある
- 「ナッシュ均衡」の状態は、1つとは限りません。「複数存在する」こともありえます。
- この例としては、「逢引のジレンマ・ゲーム」があります。
性質③「常に存在するとは限らない」
- 「ゲーム」の参加者の各人が自己の「利得」を最大にしようとして「戦略」を選択したとしても、それが「ナッシュ均衡」にならない場合もありえます。
- この例としては、「ゼロ・サム・ゲーム」があります。
支配戦略
ある「プレーヤー」が選んだ「戦略」が、他の「プレーヤー」の「戦略」に関係なく、つねに最良な戦略であることを「支配戦略」といいます。
- 各「プレーヤー」がこの「戦略」をとる均衡を「支配戦略均衡」といいます。
性質④「支配戦略均衡は必ずナッシュ均衡になる」
- 「ナッシュ均衡」とは、「ゲーム」の「プレーヤー」全員が、他人の「戦略」を考慮に入れて自己の「利得」が最大となるような「戦略」をとりあっている状態です。
- 「支配戦略均衡」とは、「プレーヤー」全員が、他人の動向に関係なく、自己の「利得」が最大となるように「戦略」をとりあっている状態です。
- 他人の動向に左右されない「支配戦略均衡」には、他人の動向を考慮に入れた「ナッシュ均衡」が当然のこととして含まれます。
よって、「支配戦略均衡は必ずナッシュ均衡になる」といえます。
- ただし、「ナッシュ均衡は必ず支配戦略均衡になる」とはいえません。
→ 次は「さまざまなゲーム(基本)」です。代表的なケースを3つ整理します。