4-2.厚生経済学の基本定理

4-1.パレート効率性 < 4-2.厚生経済学の基本定理 > 5-1.独占

(学習の目的)〔やや難〕
完全競争市場においては、価格調整メカニズムによってパレート効率的な資源配分が達成されることをまなびます。


  • さきほどの「エッジワースのボックス・ダイアグラム」では、2人の消費者がお互いの財を交換し合う「純粋交換経済」を想定して、「パレート効率的」な資源配分を説明しました。

競争均衡

このような「純粋交換経済」以外の場合でも、「パレート効率的」な資源配分は達成されます。

  • それは「価格調整」による資源配分です。
  • 価格調整」で「パレート効率的」な資源配分が達成される場合、このような均衡を「競争均衡」(ワルラス均衡)といいます。
  • 「エッジワースのボックス・ダイアグラム」で「競争均衡」について説明する場合、図の中に「価格」を表現するために、「予算制約線」の「価格比」にあたるものをつけ加えます。

(価格調整のプロセスはやや難しいのでここではふれていません。)

競争均衡の条件

  • 「価格調整」によって「パレート効率的」な資源配分が達成される場合、2人の無差別曲線は1点で接しています。
  • この接点には共通の「接線」が引けます。
  • この「接線」の傾きは「価格調整」によって望ましい資源配分をおこなうことができる「価格比」をあらわしています。
  • よって「競争均衡」の条件は次の形になります。

ある個人の限界代替率 = 別の個人の限界代替率 = 価格比


厚生経済学の第1定理

この「競争均衡」は、「完全競争」市場で「価格調整」を通じて達成されます。

  • この考え方を「厚生経済学の第1定理」といいます。
  • 厚生経済学の第1定理」とは、「完全競争市場においてパレート効率的な資源配分が達成される」という仮定です。

「効率」と「公平」の関係

  • 「パレート効率的」な資源配分とは、「社会」全体からみた「効率的」な資源配分です。
  • ここでいう「効率的」とは、あくまでも「ムダがない」ということで、「公平性」については考慮に入れていません。
  • 極端な話、片方の人間が全ての財を自分のものにしてしまったとしても、「社会」全体からみるとムダは発生していませんので、それは「効率的」な資源配分になってしまいます。
  • でも、これは「公平性」に欠けます。
  • このように「不公平」が発生した場合、それを調整していくのは「政府」の役割になります。

厚生経済学の第2定理

この「政府」の役割としては、「所得の再分配」政策が考えられます。

  • この考え方を説明するのが「厚生経済学の第2定理」です。
  • 「厚生経済学の第2定理」とは、「最初に政府が適切な所得分配をおこなえば、任意のパレート効率的な資源配分を達成させることができる」という仮定です。

(ここでいう「任意の・・・達成」とは「目標とする資源配分の状態を実現できる」という意味だと考えて下さい。)


→「4.一般均衡」はここまでです(「生産者を含めた一般均衡分析」は保留)。
→ 次の章「5.不完全競争市場」では独占などについてまなびます。
→ はじめの節「5-1.独占

4-1.パレート効率性 < 4-2.厚生経済学の基本定理 > 5-1.独占