(学習の目的)
ケインズ派の貨幣需要に対する考え方である「流動性選好説」をまなびます。
(→ 古典派の貨幣需要はこちら)
ケインズ派の貨幣需要
- ケインズ派は、貨幣需要の動機として、「取引動機」、「予備的動機」、「投機的動機」の3つを考えます。
- 「投機的動機」を考慮に入れる点が古典派との違いです。
ケインズ派の「流動性選好説」
- ケインズ派の貨幣需要に対する考え方は、「流動性選好説」とよばれます。
- 「流動性」とは「貨幣」のことです。
- 「債券」と異なって貨幣は現金として持っていても利息はつきません。
- でも、財と交換しやすいという便利さがあります。
- この交換の「しやすさ」が「流動性」ということばの意味です。
- この便利さを犠牲にして、債券を購入すると、代わりに得られるものがあります。
- それが「利子率」です。
かんたんにいうと、流動性選好説とは「資産を貨幣で持つか、債券で持つかは、利子率によって決まる」という考え方です。
取引動機と予備的動機
- 取引動機と予備的動機については、ケインズ派と古典派は考え方が共通しております。
- この2つについては、貨幣需要は「国民所得の増加関数」と仮定します。
- これは、国民所得が増えれば、取引も増えるので、それに使われる貨幣に対する需要も増えるということです。
投機的動機
ケインズ派は、投機的動機の貨幣需要は「利子率の減少関数」と仮定します。
- この利子率は「市場利子率」です。
- かんたんにいえば、金融機関でお金を貸し借りするときの利子率です。
- 「減少関数」とは、反比例のことです。
- つまり、利子率が下がると貨幣需要は増加し、利子率が上ると貨幣需要が減少するということを表しています。
なぜそう考えるかについては、「債券価格」について説明する必要があります。
債券価格と利子率の関係
- 「債券」には利息がつきます。
- この利息が高いか低いかは、「貨幣」をやりとりする場合の「利子率」と比較する必要があります。
- つまり、債券の価値(債券価格)は、利子率によって決まるということです。
この「債券価格」は「利子率の減少関数」になります。
- このことを正確に説明するには、「割引現在価値」という考え方と数列の知識をつかう必要があるので少々やっかいです。
- ここではかんたんに次のように考えましょう。
- 利子率が高い状態とは、貨幣に人気がある状態です。
- 一方で、債券の人気は下がります。
- よって債券価格も低下することになります。
利子率の動きと債券価格の動きが反対になっているので「減少関数」ということになります。
貨幣需要と利子率の関係
- この「債券価格と利子率」の関係を、さきほどの「貨幣需要」にあてはめてみましょう。
- 利子率が下落した場合を考えます。
- 「債券価格は利子率の減少関数」ですので、この場合、債券価格は上昇します。
- 債券価格が上昇すると、債券を欲しがるように思えますが、そうではありません。
- 債券価格が上昇したのをみて人々は、こう考えます。
- 「債券価格がこんなに上ってしまったら、今更買っても、儲けは見込めないな。資産は貨幣で持っていよう。」
- つまり、利子率が下落すると、貨幣需要が増加することになるのです。
利子率の動きと貨幣需要の動きが反対になっているので「減少関数」ということになります。