第15回 (3)IS-LM分析①…IS-LM分析/IS曲線/LM曲線/IS-LM分析

(講義のねらい)
「IS-LM分析」では、ここまで別々にみてきた「財市場」と「貨幣-債券市場」を、国民所得(Y)と利子率(r)でむすびつけて分析していきます。

今回は、「IS-LM分析とは何か?」について基礎的な内容をみていきます。
「IS曲線」では、「財市場」を均衡させる「国民所得」と「利子率」の関係をみます。一般的にグラフの形は右下がりになります。
「LM曲線」では、「貨幣市場」を均衡させる「国民所得」と「利子率」の関係をみます。一般的にグラフの形は右上がりです。

この2つをくみあわせておこなうのが「IS-LM分析」です。財政政策や金融政策の効果をみることができます。

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(基礎講座の解説動画)


(無料動画)

YouTubeで公開している動画を軸に説明を組み立てていきます。

(内容)
3-1.IS-LM分析の全体像 →I・S・L・Mが何を意味するか?なぜ、国民所得と利子率に注目するのか?
3-2.IS曲線 → 財市場が均衡する国民所得と利子率の組み合わせ。
3-3.LM曲線 → 貨幣市場が均衡する国民所得と利子率の組み合わせ。
3-4.IS-LM分析 → 2つの曲線をむすびつけて、何が説明できるか?

3-1.IS-LM分析の全体像

「IS-LM分析」では、ここまで別々にみてきた「財市場」と「貨幣-債券市場」を、国民所得(Y)と利子率(r)でむすびつけて分析していきます。

  • 「IS-LM分析」のうち、「I」は「投資(Investment)」、「S」は「貯蓄(Saving)」、「L」は「Liquidity(貨幣需要)」、「M」は「Money Supply(貨幣供給)を意味します。
  • 「財政政策」や「金融政策」などの経済政策の効果をみることができるので、公務員試験などではこのIS-LM分析はよく出題されます。

(動画)IS-LM分析の全体像 [18:54]

IS-LM分析の基礎を学ぶ前に、そもそもIS-LM分析で何を学ぶのかを見ていきましょう。
(timeline)
0:10 マクロ経済学の全体像
3:48 I・S・L・Mが意味するもの
8:48 国民所得と利子率
13:43 定義とグラフの形
17:15 まとめ
17:54 今回の復習

「IS」と「LM」は何を指す?

  • IS曲線」は「財市場」をあらわします。
  • この「IS」は、「投資」(:investment)と「貯蓄」(S:saving)をあらわしています。
  • LM曲線」は「貨幣市場」をあらわします。
  • この「LM」は、「貨幣需要」(:Liquidity)と「貨幣供給」(:Money supply)をあらわしています。

国民所得と利子率

IS曲線とLM曲線は、それぞれの市場が均衡する「国民所得」と「利子率」のくみあわせを示しております。

  • 「国民所得」は「財市場」で決まる値ですが、「貨幣市場」にも影響を与えます。
  • また、「利子率」は「貨幣市場」で決まる値ですが、「財市場」にも影響を与えます。

よって、「国民所得」と「利子率」をとりあげることによって、「財市場」と「貨幣市場」の両方の分析ができることになります。

政策の効果をみる

  • マクロ経済学では、経済政策のあり方について考えます。
  • 経済政策には公共事業減税などの「財政政策」と、マネー・サプライを変化させる「金融政策」があります。
  • これらは、目標とする「国民所得」の水準を達成するためにおこなわれます。
  • このような政策の効果をみるために、「IS-LM分析」は用いられます。
  • 「IS曲線」と「LM曲線」が交わる点は、「財市場」と「貨幣市場」が同時に均衡する「国民所得」と「利子率」の組合せをしめしております。

財政政策」をおこなうと「IS曲線」がシフトします。
金融政策」をおこなうと「LM曲線」がシフトします。

  • 曲線がシフトしたことによって、新たな均衡点があらわされます。

シフト前の均衡点とシフト後の均衡点を比較することによって、経済政策に効果があったかどうかを説明します。


では、それぞれの曲線についてみていきましょう。はじめは財市場の均衡をあらわす「IS曲線」から。

3-2.IS曲線

(学習の目的)
IS曲線が右下がりになる理由をまなびます。

(動画)IS曲線とは? [09:53]

IS曲線とは?その定義と導出方法、グラフのシフト理由についてまなびます。
(timeline)
0:00 IS-LM分析の仮定 (物価一定、海外部門なし)
1:37 IS曲線とは
2:59 IS曲線の仮定と投資関数の形 ←重要な1つの仮定
5:39 IS曲線の導出(右下がりとなる理由)
7:15 IS曲線のシフト

IS曲線

「IS曲線」は、「財市場」を均衡させる「国民所得」と「利子率」の組合せをあらわします。

  • 「I」は「投資」で、「S」は「貯蓄」です。
  • 生み出した付加価値が手元に分配されますが、そのなかで「消費」せずに「貯蓄」しておいたものが「投資」にまわると考えてください。
  • 「投資」や「貯蓄」は、「利子率」の影響を受けます。
  • また「投資」によって「国民所得」が決定されます。

「国民所得」と「利子率」を用いることによって、「投資」と「貯蓄」をふくめた「財市場」を説明するのが「IS曲線」だと思ってください。

IS曲線の形状

一般的に「IS曲線」の形状は「右下がり」です。

  • 「水平」の場合もあります。
  • 「垂直」の場合もあります。
  • これらは応用編でまなびます。

IS曲線の導出

  • 「投資」は「利子率の減少関数」と仮定します。
  • これは、利子率が低いほど、投資に必要な資金が借りやすくなるからです。
  • 「利子率が低下」すると、「投資が増加」します。
  • これは「総需要が増加」したことになるため、「均衡国民所得が増加」します。

「利子率が低下」したことによって「国民所得が増加」することになるので、「IS曲線は右下がり」になります。


つづいて、貨幣市場の均衡をあらわす「LM曲線」をみていきましょう。

3-3.LM曲線

(学習の目的)
LM曲線が右上がりになる理由をまなびます。

(動画)LM曲線とは? [09:55]

LM曲線とは?その定義と導出方法、グラフのシフト理由についてまなびます。
[timeline]
0:00 LM曲線とは
0:40 LM曲線の仮定と貨幣需要の関数の形 ←重要な2つの仮定
3:52 LM曲線の導出(右上がりとなる理由)
5:16 債券市場を考える
7:14 LM曲線のシフト
8:55 次に何を学ぶか?

LM曲線

「LM曲線」は、「貨幣市場」を均衡させる「国民所得」と「利子率」の組合せをあらわします。

  • 「L」は「貨幣需要」で、「M」は「貨幣供給」です。
  • 貨幣需要と貨幣供給が一致したところで、貨幣の需給量と貨幣の価格が決まります。
  • 「貨幣の価格」とは、「利子率」です。
  • この「利子率」は「国民所得」にも影響を与えます(ただしこれはケインズ派の場合です)。

「国民所得」と「利子率」を用いることによって「貨幣需要」と「貨幣供給」で決まる「貨幣市場」を説明するのが「LM曲線」だと思ってください。

LM曲線の形状

一般的に「LM曲線」の形状は「右上がり」です。

  • 「水平」の場合もあります。
  • 「垂直」の場合もあります。
  • これらは応用編でまなびます。

とくにここは、「ケインズ派」と「古典派」の考え方が異なるところですので、重点的にまなぶことになります。

LM曲線の導出

  • 貨幣の「取引需要」と「予備的需要」は「国民所得の増加関数」と仮定します。
  • 貨幣の「投機的需要」は「利子率の減少関数」と仮定します。
  • 「国民所得が増加」すると、貨幣の「取引需要や予備的需要が増加」します。
  • すると、需要が供給を上回るために、「貨幣市場は超過需要」になります。
  • このとき反対に、「債券市場は超過供給」になります。
  • これは債券に対する需要が少ないこと、つまり債券の人気が下がったことをあらわすので、「債券価格は下落」します。
  • 「債券価格は利子率の減少関数」であると仮定すると、「利子率は上昇」します。

「国民所得が増加」したことによって、「利子率が上昇」することとなるので、「LM曲線は右上がり」になります。


IS曲線とLM曲線をくみあわせて「IS-LM分析」をおこないます。

3-4.IS-LM分析

(学習の目的)
IS-LM分析では、財政政策や金融政策の効果を分析することができます。

IS曲線とLM曲線の交点

「IS曲線」と「LM曲線」の交点では、「財市場」と「貨幣市場」が同時に均衡する「国民所得」と「利子率」の組合せが示されています。

IS-LM分析の利用目的

「財政政策」や「金融政策」によって、「IS曲線」や「LM曲線」はシフトしますので、IS-LM分析によってこれらの政策の効果を分析することができます。

IS曲線のシフト

「財政政策」は「政府支出」や「租税」を変化させる政策です。

  • 一般的に、不景気のときは景気を刺激するために、「政府支出」を増やしたり、「租税」を減らしたりする「減税」がおこなわれます。
  • これは「拡張的財政政策」といい、「IS曲線を右シフト」させます。
  • 景気が過熱したときには、「政府支出」を減らしたり、「租税」を増やしたりする「増税」がおこなわれます。
  • これは「縮小的財政政策」といい、「IS曲線を左シフト」させます。

LM曲線のシフト

「金融政策」は、「マネー・サプライ」を変化させる政策です。

  • 一般的に、不景気のときは景気を刺激するために、「マネー・サプライ」を増やします。
  • これは「拡張的金融政策」(金融緩和政策)といい、「LM曲線を右シフト」させます。
  • 景気が過熱したときには、「マネー・サプライ」を減らします。
  • これは「縮小的金融政策」といい、「LM曲線を左シフト」させます。

例題1.(計算問題)

(例題)
ある国のマクロ経済が次の式で表されているとする。
Y=C+I
C=40+0.8Y
Ⅰ=40-5r
L=0.2Y-5r+140
M/P=100
(Y:国民所得、C:消費、I:投資、r:利子率、L:貨幣需要、M:貨幣供給、P:物価)
この経済における均衡国民所得と均衡利子率の値を求めよ。
(東京特別区の過去問を参考に作成)

 

(動画)IS-LM曲線の計算問題 [12:34]

例題2.(論述問題)

「IS-LM分析について説明せよ。」→ 論述試験の対策「IS-LM分析」


ここまでは無料の動画です。

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(有料動画)

マクロ経済学基礎講座『IS-LM分析』の解説動画

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3-0.IS-LM分析のもくじ [04:53] (無料サンプル
3-1. IS-LM分析でまなぶこと [06:47](100円)
3-2. IS曲線 [18:25](300円)
3-3. LM曲線 [20:58](400円)
3-4. IS-LM分析 [09:58](200円)

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3-0.IS-LM分析のもくじ [04:53] (無料サンプル

3-1. IS-LM分析でまなぶこと [06:47](100円)

3-2. IS曲線 [18:25](300円)

3-3. LM曲線 [20:58](400円)

3-4. IS-LM分析 [09:58](200円)

—-(次回の内容)—-
3-5. クラウディング・アウト [19:58](400円)
3-6. 流動性のわな [12:48](300円)
3-7. さまざまなケース [13:25](300円)

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