(講義のねらい)
- 前回は、無差別曲線と予算制約線をつかって、ある「価格」のときの「消費量」を説明しました。
- 予算制約線は、「予算(所得)」が変化したり、財の「価格」が変化したりすると変形します。そこで、今回は「所得」と「価格」の変化についてまなびます。
- 先に、「所得」の変化の影響をみます。どれくらいの影響があるかは「弾力性」という考え方で説明します。
- 次に、「価格」の変化の影響をみます。価格の変化の影響は、2つの変化に分解することができます。
- 価格そのものの変化による影響が「代替効果」です。
- 価格の変化が実質的な所得の変化につながり、それによっておこる変化が「所得効果」です。
- はじめて経済学をまなぶ方にとってはかなり難しいと思いますので、多くの無料動画をつかってじっくりと説明していきます。
無料動画(合計 64分)
- かんたんミクロ経済学(3)財の分類①所得の変化[05:28]
- 「所得が変化すると?」[9:27]
- 「需要の所得弾力性」[10:35]
- 「エンゲル曲線」[04:40]
- 「価格が変化すると?」[07:47]
- 「代替効果と所得効果1」(定義)[05:14]
- 「代替効果と所得効果2上級財」[06:55]
- 「代替効果と所得効果3中級財」[02:35]
- 「代替効果と所得効果4下級財/ギッフェン財」[11:34]
有料動画(合計 32分)
(ミクロ経済学書き込みノートの解説動画)
(無料動画)
YouTubeで公開している動画を軸に説明を組み立てていきます。
1-4.所得の変化 → 所得-消費曲線 /「弾力性」という考え方 / 需要の所得弾力性 / 需要の所得弾力性と財の分類 / 財の分類:奢侈品と必需品 /エンゲル曲線
1-5.価格の変化 → 価格-消費曲線 / 価格の変化と所得の変化 / 代替効果と所得効果 / 代替効果 / 所得効果 / 全部効果 / (上級財のケース)/(中級財のケース)/(下級財のケース)/ ギッフェン財(一部の下級財)
前回、「予算制約線」についてまなびました。この予算制約線をつくるには、「買い物に使える額はいくらか?」(所得=予算)、「商品の価格はいくらか」という2種類の情報が必要です。「所得(予算)」や財の「価格」は変化しますので、これらの変化の影響についてみていきます。
この消費者理論の目的は、「需要曲線」を描くことです。需要曲線は、「価格が変化したら消費(需要)量はどのように変化するか」をあらわしたものです。ですから、価格の変化を分析すればそれで十分にも思えますが、実は価格の変化は所得の変化ともむすびついています。
よって、まずは「所得の変化」からみていきましょう。
1-4.所得の変化
(学習の目的)
「予算」が変化したら消費量はどうなるかを分析します。ここでまなぶ「弾力性」という考え方はとても重要です。
所得の変化と財の種類
所得(予算)が変化すると、消費量も変化することが考えられます。
まずはこの動画でイメージをつかんでみてください。
(動画)かんたんミクロ経済学(3)財の分類①所得の変化[05:28]
0:00 5種類に分類
0:30 上級財・中級財・下級財
3:11 奢侈品・必需品
4:53 需要の所得弾力性
(学習上のアドバイス)
上級財と下級財を理解することが目的ですが、間の「中級財」を基準にして、プラスの影響(上級財)、マイナスの影響(下級財)というようにみていくといいでしょう。
所得の変化による影響を、無差別曲線と予算制約線をつかってみていきましょう。
所得-消費曲線
所得(予算)が変化すると、消費量も変化することが考えられます。
(動画)「所得が変化すると?」[9:27]
0:00 ここまでに学んだこと
0:16 価格や所得がしたらどうなるか?
0:24 ①所得が変化すると
2:14 「所得-消費曲線」
2:48 ②財の分類
4:33 X財が上級財
5:17 X財が中級財
6:20 X財が下級財
7:12 まとめ
7:43 Y財が上級財
8:14 Y財が中級財
8:27 Y財が下級財
9:09 まとめ
- 所得の変化に応じて「最適消費点」が変化する場合、この最適消費点の「軌跡」を表したものを「所得-消費曲線」といいます。
- 一般的に、所得が増えれば、消費量も増えると考えられます。この場合、「所得-消費曲線」は「右上がり」の形でえがかれます。
(学習上のアドバイス)
実際に紙に描いてみると理解しやすくなります。
財の分類:上級財と下級財
ただし、財によっては、所得が増えても消費量が変化しないものや、逆に消費量が減ってしまうものも考えられます。
- 所得が増加したとき、消費量が「増加」する場合、このような財を「上級財(正常財)」といいます。
- 所得が変化しても、消費量が「変化しない」場合、このような財を「中級財(中立財)」といいます。
- 所得が増加したとき、消費量が「減少」する場合、このような財を「下級財(劣等財)」といいます。
需要の所得弾力性
所得が変化したら、消費量がどれだけ変化するかを数値で表現することができます。これが「需要の所得弾力性」です。
(動画)「需要の所得弾力性」[10:35]
0:00 「弾力性」とは
0:50 需要の所得弾力性
1:23 定義
2:15 数式で
3:25 式を変形
4:10 財の分類につかう
4:58 「中級財」「上級財」「下級財」
5:36 「奢侈品」「必需品」
7:13 「奢侈品は必ず上級財?」「上級財は必ず奢侈品?」
9:04 エンゲル曲線から計算する
10:21 まとめ
「弾力性」という考え方
「あるものの変化」に対して、「別のものがどれだけ変化」したかは、数値で求めることができます。これを「弾力性」といいます。
- たとえば、ボールを床に落としたら、「どれだけ跳ね返るか」をイメージしてみてください。
- 「A→B」という関係がある場合、この「弾力性」は、「Bの、A弾力性」という形で表現されます。
- 「所得の変化→消費量(需要量)の変化」の場合、「需要の所得弾力性」と表現されます。
- 「価格の変化→消費量(需要量)の変化」の場合は「需要の価格弾力性」と表現されます。
需要の所得弾力性
「需要の所得弾力性」とは、「所得が1%増加したとき、消費量が何%変化するか」を示します。式であらわすと次の形になります(X:消費量、M:所得)。
- 「変化量と変化量」ではなく、「変化率と変化率」で求めるのがポイントです。
需要の所得弾力性と財の分類
財の種類のよって「需要の所得弾力性」は異なります。
- 「上級財」の場合、「需要の所得弾力性は0より大きい」値になります。所得が増えれば(+)、消費量も増える(+)ことから、弾力性も(+)になります。
- 「中級財」の場合、「需要の所得弾力性は0」になります。所得が増え(+)ても、消費量は変化しません(±0)。よって、弾力性も(±0)になります。
- 「下級財」の場合、「需要の所得弾力性は0より小さい」値になります。所得が増えたら(+)、消費量が減ってしまう(-)ことから、弾力性は(-)になります。
次に、別の分類の仕方をまなびます。
財の分類:奢侈品と必需品
「上級財」、「中級財」、「下級財」の他に、財は「奢侈品」と「必需品」に分類することもできます。
- 「奢侈品」(ぜいたく品)とは、所得の変化率に対して、消費量の変化率が上回っているような財です。感覚的には、「給料、そんなに増えてないのに、それ買っちゃうの?」というような財のことです。
- 「奢侈品」の場合、「需要の所得弾力性は1より大きい」値になります。
- 「必需品」とは、所得の変化率に対して、消費量の変化率が下回っているような財です。感覚的には、トイレットペーパーをイメージしてください。給料が10倍になったとしても、さすがに10倍は使わないと思います。
- 「必需品」の場合、「需要の所得弾力性は1より小さい」値になります。
(次にまなぶ「エンゲル曲線」はやや難しいので、後回しにしても構いません。)
エンゲル曲線
「所得」の変化と「最適消費量」の変化を示した曲線を「エンゲル曲線」といいます。
(動画)「エンゲル曲線」[04:40]
0:00 エンゲル曲線とは
0:15 グラフで確認
1:36 エンゲル曲線を描く
2:54 上級財の場合
3:12 中級財と下級財
4:06 関数であらわす
- 横軸が「消費量」、縦軸が「所得」の形であらわされます。
- 「上級財」の場合、所得が増えると消費も増えるので、「エンゲル曲線は右上がり」の形になります。
- 「中級財」の場合、所得が増えても消費は変化しないので、「エンゲル曲線は水平」の形になります。
- 「下級財」の場合、所得が増えると消費が減るので、「エンゲル曲線は右下がり」の形になります。
このエンゲル曲線は、「所得の変化→消費量の変化」をあらわしたものです。
では、「価格の変化→消費量の変化」をあらわしたものは何でしょうか?
そうです、「需要曲線」です。エンゲル曲線についてまなんでおくことは、需要曲線の予習にもなります。
次は「価格の変化」です。価格が変化すると、実質的に所得の変化につながることがポイントです。
1-5.価格の変化
(学習の目的)
「価格」が変化したら消費量はどうなるかを分析します。ここで学ぶ「代替効果と所得効果」はやや難しい内容ですが、非常に重要です。
(動画)「価格が変化すると?」[07:47]
0:00 予算制約式で確認
0:38 予算制約線で確認
2:57 無差別曲線とむすびつけて
4:46 需要曲線が描ける
5:48 価格-消費曲線
6:12 「需要の法則」
6:47 法則が当てはまらない場合も
価格-消費曲線
価格が変化すると、消費量も変化することが考えられます。
- この関係を「無差別曲線」と「予算制約線」を用いてあらわします。
- 価格の変化に応じて「最適消費点」が変化する場合、この最適消費点の「軌跡」を表したものを「価格-消費曲線」といいます。
価格の変化と所得の変化
- 価格の変化の分析は、所得の変化と比べると少々ややこしくなります。
- これは、価格の変化については、同時に所得の変化についても考える必要がでてくるからです。
- たとえば、今まで100円だった財が50円になった場合を考えてみましょう。
- 「100円→50円」は「価格の変化」です。所得(予算)がたとえば1000円あったとします。
- 価格の変化によって、同じ1000円で買える財の量も変わります。この場合、「実質的に」所得が増えたことになります。
代替効果と所得効果
このように、「価格の変化」は、「価格そのものの変化」と「実質的な所得の変化」の2つに分けて分析をする必要が出てくるのです。
- 「価格そのものの変化」をみたものが「代替効果」です。
- そして、「実質的な所得の変化」をみたものが「所得効果」です。
(動画)「代替効果と所得効果1」(定義)[05:14]
0:00 価格の変化がおきると
0:18 ①価格比が変化
0:36 ②実質所得が変化
1:37 代替効果と所得効果
1:57 「代替効果」とは
2:32 「所得効果」とは
3:05 まとめて「全部効果」
3:51 価格の変化のパターン
5:08 つづいて
代替効果
「財の価格比(相対価格)の変化」による消費量の変化を「代替効果」とよびます。
- 「相対価格」が変化すると、「同じ効用」を保つために消費量が変化します。
- この関係はグラフでは、「予算制約線の傾きが変化」することで表します。
- 横軸の財の価格が低下すると、予算制約線の傾きは「緩やか」になります。
- このとき、横軸の財の消費量は「増加」します。よって、代替効果は「+」になります。
所得効果
「実質所得の変化」による消費量の変化を「所得効果」とよびます。
- 「実質所得が変化」すると、「代替効果」で傾きが変化した「予算制約線が平行シフト」します。
- 財の価格が低下すると、予算制約線は「右上に平行シフト」します。
- ここで、財の種類が重要になります。
- 財が「上級財」である場合、「実質所得の増加」によって消費量は「増加」します。よって、所得効果は「+」になります。
- 財が「下級財」である場合、「実質所得の増加」によって消費量は「減少」します。よって、所得効果は「-」になります。
全部効果
「代替効果」と「所得効果」を合わせて、「全部効果」とよびます。
- 「横軸」の財の「価格が低下」するケースを考えます。
- このとき、「代替効果」は「+」になり、「実質所得は増加」します。
(①上級財のケース)
- 財が「上級財」である場合、「所得効果」は「+」になるため、「全部効果」は「+」になります。
(動画)「代替効果と所得効果2上級財」[06:55]
0:00 ①X財が上級財
0:32 X財の価格が↓
1:32 代替効果はこの部分
3:28 所得効果はこの部分
(別の見方)
4:06 代替効果(+)
5:15 所得効果(+)
6:34 全部効果(消費量↑)
(②中級財のケース)
- 財が「中級財」である場合、「所得効果」は「±ゼロ」です。「代替効果」の「+」分が「全部効果」の「+」になります。
(動画)「代替効果と所得効果3中級財」[02:35]
0:00 ②X財が中級財
0:13 X財の価格が↓
0:22 代替効果(+)
0:32 所得効果(±0)
2:01 全部効果(+)
(③④下級財のケース)
財が「下級財」である場合、「所得効果」は「-」になるため、「全部効果」は以下の3通りのパターンが考えられます。
- 絶対値で比較し、「代替効果(+)> 所得効果(-)」となる場合、「全部効果」は「+」になります。
- 絶対値で比較し、「代替効果(+)= 所得効果(-)」となる場合、「全部効果」は「±0」になります。
- 絶対値で比較し、「代替効果(+)< 所得効果(-)」となる場合、「全部効果」は「-」になります。このような財を「ギッフェン財」といいます。
(動画)「代替効果と所得効果4下級財/ギッフェン財」[11:34]
0:00 ③X財が下級財(通常)
0:23 X財の価格が↓
0:46 代替効果(+)
1:17 所得効果(-)
2:40 全部効果(+)
3:16 ④X財がギッフェン財
3:31 代替効果(+)
4:25 所得効果(-)
5:31 全部効果(-)(消費量↓)
6:58 まとめ
ギッフェン財(一部の下級財)
一般的に「価格が低下すると消費量は増加」します。これは「需要の法則」とよばれます。
- 「ギッフェン財」は、この「需要の法則」があてはまらない財です。
- つまり、ギッフェン財とは、価格が低下したのに、消費量が減少してしまう財です。
- 所得の変化をみて分類した「下級財」の一部がこの「ギッフェン財」になります。
- よって「超下級財」ともよばれます。
これらの説明はかなりややこしいので、実際にグラフを描いて理解することをおすすめめします。→ 「代替効果と所得効果のグラフの確認へ」
ここまでは無料の動画です。
前回 < 今回 > 次回
(有料動画)
『ミクロ経済学書き込みノート』の解説動画
テキストの『ミクロ経済学書き込みノート』をつかって説明していきます。
解説動画のご利用(レンタル)は動画配信サービスFilmuyからどうぞ。
以下の解説動画のご利用(レンタル)は動画配信サービスFilmuyからどうぞ。
1-4.所得の変化 [16:11](200円)
1-5.価格の変化 [16:10](200円)
1-4.所得の変化 [16:11](200円)
1-5.価格の変化 [16:10](200円)
—-(次回の内容)—-
1-6.需要曲線と需要の価格弾力性 [09:31](100円)
1-7.さまざまな無差別曲線 [04:54](100円)
前回 < 今回 > 次回