6-3-1.資本移動が完全(固定相場制度)のケース

(学習の目的)
グローバル経済を想定して、「資本移動が完全」なケースを分析します。
はじめに「固定相場制度」のケースを分析します。


「資本移動が完全」なケースでは、「固定相場制」では、「財政政策は有効」で「金融政策は無効」になります。


資本移動が完全なケース

  • 資本移動の自由度についてはさまざまなケースがありますが、経済のグローバル化が進んでいる現代では、「資本移動が完全」なケースからみていくことが一般的です。
  • この場合、為替相場のシステムが、「固定相場制度」か「変動相場制度」かによって、説明が異なります。

結論をまとめると、「資本移動が完全」なケースでは、

  • 固定相場制度」では、「財政政策は有効」で「金融政策は無効」になります。
  • 変動相場制度」では、「財政政策は無効」で「金融政策は有効」になります。

まずは、「固定相場制度」のケースをみていきましょう。

「資本移動が完全」なケースでは、「固定相場制度」では、「財政政策は有効」で「金融政策は無効」になります。


1-1.資本移動が完全(固定相場制度)で財政政策

財政政策は有効○
「資本移動が完全で固定相場制度」のとき、「(拡張的)財政政策は有効」となります

  • 「(拡張的)財政政策」をおこなうと「IS曲線が右シフト」します。すると、「利子率は上昇」します。
  • 「資本移動が完全」ですので、この高い利子率を求めて、外国から「資本が流入」します。
  • 自国内で取引をおこなうために、通貨が必要になりますので、自国通貨への需要が増えて、「超過需要」になります。
  • 為替システムは、「固定相場制度」なので「為替レートを維持」する必要があります。
  • 通貨当局は「外国通貨を購入」します。
  • これによって、自国通貨の流通量が国内で「増加」します。
  • すると、「マネー・サプライが増加」します。
  • 「マネー・サプライが増加」すると、「LM曲線は右シフト」します。
  • 新しい均衡点では、「国民所得は増加」することになります。

よって、「資本移動が完全」で「固定相場制度」のとき、「(拡張的)財政政策は有効」となります。


1-2.資本移動が完全(固定相場制度)で金融政策

金融政策は無効×
「資本移動が完全で固定相場制度」のとき、「(拡張的)金融政策は無効」となります。

  • 「(拡張的)金融政策」をおこなうと、「LM曲線が右シフト」し、「利子率は下落」します。
  • 「資本移動が完全」ですので、相対的に高くなった海外の利子率を求めて、自国から「資本が流出」します。
  • 自国通貨への需要は減って、「超過供給」になります。
  • 為替システムは、「固定相場制度」なので「為替レートを維持」する必要があります。
  • 通貨当局は「外国通貨を売却」します。
  • これによって、自国通貨の流通量が国内で「減少」します。
  • すると、「マネー・サプライが減少」します。
  • 「マネー・サプライが減少」すると、「LM曲線は左シフト」します。
  • はじめに「右シフト」した「LM曲線」が「左シフト」して元に戻ってしまいますので、「国民所得は変化しない」ことになります。

よって、「資本移動が完全」で「固定相場制度」のとき、「(拡張的)金融政策は無効」となります。


以上をまとめると、「資本移動が完全」なケースではこうなります。

  • 「固定相場制度」では「財政政策は有効」
  • 「固定相場制度」では「金融政策は無効」

→ 資本移動が完全で、『変動相場』制度のケース」