(学習の目的)
IS-LM分析の応用です。BP曲線は国際収支が均衡している状態の国民所得と利子率の組合せです。財政政策と金融政策の効果を分析します。
BP曲線
「BP曲線」(国際収支均衡線)とは、「国際収支」を均衡させる「国民所得」と「利子率」の組合せをあらわします。このモデルは、以下の3つの仮定をたてています。
- 経常収支は為替レートの増加関数と仮定
- 経常収支は国民所得の減少関数と仮定
- 資本収支は利子率の差の増加関数と仮定
1.経常収支は為替レートの増加関数と仮定
モノのやりとりを示す「経常収支」は、「(自国通貨建て)為替レート(e)の増加関数」と仮定します。
- 「為替レート」(e)の「上昇」とは、自国通貨の「減価」(円安)のことです。
- 円安では「輸出が増加」するため、「経常収支が改善」されます。
「為替レートが上昇すると経常収支が改善(プラス)」することから、「増加関数」としてあらわされます。
2.経常収支は国民所得の減少関数と仮定
また、「経常収支」は、「国民所得(Y)の減少関数)と仮定します。
- 「国民所得が増加」した場合、その分だけ海外からの輸入が増えます。
- これに対して、自国の国民所得が増加したからといって、輸出相手国に何らかの影響を与えることは考えられません。
- 「輸入が増加」することによって、支払のお金が海外に出ていってしまうので、「経常収支が悪化」します。
「国民所得が増加すると経常収支が悪化(マイナス)」することから、「減少関数」としてあらわされます。
3.資本収支は利子率の差の増加関数と仮定
カネのやりとりを示す「資本収支」は、「自国利子率と外国利子率の差の増加関数」と仮定します。
「自国利子率」を「r」、「外国利子率」を「r*」とすると、この関係は「(r-r*)の増加関数」とあらわされます。
- 自国の利子率が外国の利子率より高くなった場合、この自国内での高い利子率をもとめて外国から「資本が流入」します。
- よって「資本収支は改善」されます。
「自国利子率と外国利子率の差(r-r*)が拡大(プラス)」したことによって、「資本収支が改善(プラス)」することから、「増加関数」としてあらわされます。
BP曲線の形状
これらの仮定を結びつけてBP曲線を導き出すと、一般的に「BP曲線は右上がり」の形であらわされます。
(導出)
- 「国民所得(Y)が増加」すると、「輸入は増加」します。
- よって、「経常収支は悪化」します。
- このとき、「国際収支が均衡」するためには(BP=0)、「資本収支が改善」する必要があります。
- このためには、海外から「資本が流入」するように、自国の「利子率(r)が上昇」する必要があります。
- 「国民所得(Y)が増加」することによって、「利子率(r)が上昇」することから、「BP曲線状は右上がり」の形になります。
(以下については、理由は少々難しいので現時点では保留しておいてください)
BP曲線と国際収支の関係
BP曲線の上では、国際収支は均衡しております。
- ということは、それ以外の位置では、国際収支は黒字か赤字の状態にあることになります。
- 右上がりのBP曲線では、BP曲線より右下のエリアでは国際収支は「赤字」になります。
- 右上がりのBP曲線では、BP曲線より左上のエリアでは国際収支は「黒字」になります。
BP曲線のシフト
- 「為替レート(e)が上昇」(減価)した場合、「BP曲線は右シフト」します。
- 「為替レート(e)が下落」(増価)した場合、「BP曲線は左シフト」します。
BP曲線の傾き
BP曲線の傾きは、「資本移動の自由度」を示します。
- 「資本移動が完全」の場合、「BP曲線は水平」の形になります。
- 「資本移動が無い」場合、「BP曲線は垂直」の形になります。
- 一般的な状態、つまり、資本移動が完全でもなく、まったく無いでもない場合は、BP曲線の形状は「右上がり」となります。
- この場合、資本移動が「伸縮的」か、それとも「硬直的」かは、BP曲線の傾きで表します。
- この時、同じく右上がりの形であるLM曲線との傾きの差が目安となります。
IS-LM-BPモデル(マンデル=フレミング・モデル)
BP曲線は、IS-LM曲線とむすびつけることによって、財政政策や金融政策の効果を分析することができます。このモデルを「IS-LM-BPモデル」(マンデル=フレミング・モデル)といいます。
それぞれの政策の効果は、以下の点によって異なります。
- 資本移動の自由度(完全/伸縮的/硬直的/なし)
- 固定相場制度か変動相場制度か
ここでは、「資本移動が完全」なケースについて、「固定相場制度」か「変動相場制度」かに分けて、財政政策と金融政策の効果をみていきます。