(学習の目的)
貨幣が貨幣を生み出すプロセスをまなびます。
信用創造
- 「貨幣」にはまず、コインやお札などの「現金」があります。
- この他に、金融機関に預けた「預金」も貨幣に含まれます。
- この預金は新たに貸し出されて世の中に出回ります。これが繰り返されます。
よって、初めに受け入れた「預金」の何倍もの「派生的預金」が、世の中に発生することになります。
- これを「信用創造」といいます。
- 金融システムは信用によって成り立っています。
- われわれが銀行にお金を預けるのは、「いつでも引き出せる」からです。
- いつでも引き出せるから、今は預けておくのです。
- この信用が崩れてしまったら、金融システムは瞬く間に崩壊するでしょう。
支払準備率
- 金融機関は、支払いに備えて、預金の一部を手もとに置いておきます。
- これを「準備金」といいます。
- 金融システムを守るために、政府や中央銀行などの金融当局は「支払準備率」を定めます。
「支払準備率」とは、金融機関が「預金」のうち支払の準備として残しておくべき比率を示しております(法定準備率、預金準備率ともいいます)。
- 中央銀行はこの「支払準備率」を上げ下げすることによって、貨幣の供給量(マネー・サプライ)を操作することができます。
預金総額
- 初めに受け入れた預金(Deposit)を「本源的預金」といいます。
- ここでは「d」であらわすことにします。
- 「支払準備率」(reserve requirement ratio)を「r」とします。
「預金総額」(D)は次の形になります。
D = d/r
続いて、「中央銀行」が貨幣供給量をコントロールするプロセスをみていきましょう。
ハイパワード・マネー
- 中央銀行は、すべてのお金をコントロールできるわけではありません。
- 自分たちがコントロールできるものを通して、金融市場を調整しようとするのです。
このように中央銀行が直接コントロールできる貨幣量のことを「ハイパワード・マネー」(H)とよびます。
ハイパワード・マネーを式であらわすと次の形になります。
H = 現金通貨(C) + 準備金(R)
- 「現金通貨」はお札などの現金です。
- これは中央銀行以外が発行すると偽札になってしまいますので、中央銀行が直接コントロールできるお金です。
- これに対して「預金」は、「信用創造」のプロセスがありますので、全部をコントロールすることはできません。
- 「支払準備率」を通じて、「準備金」の量を調整することでコントロールしていきます。
マネー・サプライ
世の中全体に出回っているお金は「マネー・サプライ」(M)としてあらわします。式で表すと次の形になります。
M = 現金通貨(C) + 預金通貨(D)
- 「現金通貨」は「ハイパワード・マネー」のときと同じです。
- これに、世の中に出回っている「預金」を足したものが「マネー・サプライ」(M)になります。
- この「預金」も「お金」(マネー)なので「預金通貨」と表現します。
貨幣乗数
- 中央銀行は、「ハイパワード・マネー」(H)を変化させて、「マネー・サプライ」(M)全体を変化させようとします。
- このとき、「どれだけ変化するか」を表したものが「貨幣乗数」になります。
「貨幣乗数」とは、「ハイパワード・マネー」(H)を1単位増加させたときの「マネー・サプライ」(M)の増加分のことです。
「貨幣乗数」を「m」で表すと式は次の形になります。
M = mH
- この式に、さきほどの「H=C+R」と「M=C+D」を代入して、いろいろと変形させると、いくつかの金融政策について説明できます(ここでは保留しておきます)。
→ 金融政策