(講義のねらい)
- (一般的な)需要曲線が右下がりとなる理由を分析します。需要曲線については、中学校の公民でまなびました。ただし、なぜその形になるのかは説明されてませんでした。
- そこで、消費者の欲望や満足感を「効用」として取り上げて、その性質について考えます。
- 財の消費量のくみあわせと効用の大小を説明する「無差別曲線」を描きます。
- この無差別曲線と予算(所得)の関係から、消費者の満足感(効用)が最大となる条件についてまなびます。
- 所得や価格が変化すると消費量は変化します。これについては次回まなびます。
(授業の構成)
教室での授業の場合(90~110分:例題で計算問題を取り上げて説明する場合は、プラス30分は必要です。)
無料動画(合計 57分)
- 「限界効用とは?」[13:24]
- 【練習問題】効用関数「U=√X」のグラフを描き、限界効用を求めてみましょう[10:36]
- 「無差別曲線のイメージをつかむために」 [4:17]
- 「限界代替率とは?」[9:17]
- 【練習問題】ある個人の効用関数 U=X・Y (U:効用、X:X財の消費量、Y:Y財の消費量) について、この曲線上の点における限界代替率の求め方を示してください。[10:06]
- 「予算制約線」 [4:08]
- 「効用最大化の条件」 [5:47]
有料動画(合計 19分)
(ミクロ経済学書き込みノートの解説動画)
(無料動画で説明)
YouTubeで公開している動画を軸に説明を組み立てていきます。
1-1.効用と限界効用 →「満足感」について考察
1-2.無差別曲線 → 2つの財の消費量と満足感について
1-3-a.予算制約線 → 予算でどれだけ買うことができるか?
1-3-b.最適消費点と効用最大化の条件 → ある予算のもとで満足感が最大となる消費量の組み合わせは?
はじめに、「満足感」(効用)についてみていきます。
1-1.効用と限界効用
人間の行動理由である「欲望」を「効用」と定義して分析します。また、経済学でよくつかう「限界」という考え方を知ります。限界とは微分のことだと思ってください。
(動画)「限界効用とは?」[13:24](動画中のレジメは現在公開しておりません。)
消費者の行動
- 消費者は、自分の手持ちの「予算」と財の「価格」を参考にして、「消費量」を決定します。
- このとき、消費者は、一定の「予算制約」のもとで、自分の満足感を最大にしようとして行動します。
0:00 はじめに(レジメはありません)
効用とは?
- 0:35 「効用」とは?…消費者が財・サービスを購入して得られる満足感を「効用」といいます。
- 1:50 効用関数…財の消費量と効用の関係を表す関数を「効用関数」といいます。
- 3:07 効用曲線…横軸に財の消費量、縦軸に効用をとって、両者の関係を示したグラフを「効用曲線」といいます。このグラフの形は「右上がり」です。これは「消費量が増えるほど効用も増える」ことを仮定しているからです。「飽きることがない」ので、「非飽和の仮定」といいます。
- 5:46 曲線の形を説明するために…効用曲線の形は、一般的に上に凸型です。この性質を説明するために、「限界効用」という考え方をつかいます。
限界効用
- 6:22 「限界効用」とは?…「財の消費量が1単位増加したときに得られる効用の増加分」を「限界効用」といいます。
- 7:00 式であらわすと(微分)…「効用関数」を用いた数式では、この「限界効用」は、「効用を消費量で微分」して求められます。
- 7:20 グラフであらわすと(接線の傾き)…なお、「効用関数」をグラフにした「効用曲線」で示すと、「限界効用」はグラフ上の点に引いた「接線の傾き」になります。
- 8:56 「限界効用逓減の法則」…一般的に効用曲線の形状は上に凸型です。消費量が増えるほど「効用」は増えますが、その増え方はだんだんゆるやかになっていきます。これは日常的な感覚から導かれた法則で、「限界効用逓減の法則」といいます。
- 10:59 グラフで確認
- 11:58 効用は増えるが限界効用は減る
- 13:01 まとめ
(学習上のアドバイス)
「限界~(Marginal)」では、ある点における変化分をみます。「限界~」が「微分」と「接線の傾き」とイコールであることを確認しておいてください。
効用は「関数」として表現できます。よって、計算問題として出題されます。「限界効用」を求めるためには、「微分」の考え方を使います。また、関数は「グラフ」としてあらわすことができます。実際に描いてみましょう。
(動画)【練習問題】効用関数「U=√X」のグラフを描き、限界効用を求めてみましょう[10:36]〔このレジメはありません〕。
ここでみた効用関数はある1つの財に関する効用をあらわします。消費者の行動をみる場合、「価格」が重要な情報となります。ある財の価格が高いか低いかは、別の財と比べることではじめて理解することができます(価格比=相対価格)。よって、議論をすすめるためには、2つの財をとりあげる必要があります。2つの財の消費量の組み合わせと満足感(効用)をあわせて表現したものが「無差別曲線」です。
1-2.無差別曲線
2つの財の消費量の組合せでグラフを描きます。等高線をイメージしてください。
(動画)無差別曲線のイメージをつかむために [4:17]
無差別曲線
- 1.でまなんだ「効用曲線」は、ある財の「消費量」と「効用」の組合せを示したものでした。
- 次に、2つ財の「消費量」の組合せで「効用曲線」をえがきます。これが「無差別曲線」です。
- 「無差別曲線」とは、ある消費者にとって「等しい効用がえられる2つの財の消費量の組合せ」をつないだ曲線のことです。
- 地形図の等高線をイメージしてください。
無差別曲線の性質
- この「無差別曲線」には、以下の4つの性質があります。
- 「右下がり」である。これを代替性(単調性)の仮定といいます。→「右下がり」ではない場合もあります。
- 「右上ほど効用が高い」。これを非飽和の仮定といいます。→例外もあります(局所飽和の場合)。
- 「互いに交わらない」。これを推移律の仮定といいます。→例外はありません。
- 「原点に対して凸」。これを「限界代替率逓減の法則」といいます。→凸型ではない場合もあります。
この「限界代替率」はとても重要です。
(動画)「限界代替率とは?」[9:17]
限界代替率
- 0:00 ①限界代替率の定義…「限界代替率」とは、ある財の「消費量を1単位増加させたとき、同じ効用を保つために、もう一方の財を何単位減少させればよいか」を示します。
- 0:35 グラフで確認
- 1:47 無差別曲線上の点について
- 2:49 接線の傾き…「限界代替率」をグラフであらわすと、「無差別曲線」上の点に引いた「接線の傾き」になります。
- 3:31 ②限界代替率の求め方
- 4:10 効用関数と無差別曲線
- 6:10 限界効用を求める
- 7:48 限界効用の比…なお、「限界代替率」については計算問題でもよく出題されます。これは「限界効用の比」を求めることで導き出すことができます。
- 9:01 まとめ
限界代替率逓減の法則
- 一般的な「無差別曲線」は、原点に対して凸型の形であらわされます。
- これは、「限界代替率逓減の法則」があてはまっている状態です。
- 「限界代替率逓減の法則」とは、「財の消費量が増加するにしたがって、限界代替率が徐々に小さくなること」をいいます。
- この性質があてはまるとき、無差別曲線は原点に対して凸型になります。
- 無差別曲線は1-7.でまなぶように、さまざまな形がありますが、原点に対して凸でないものは、この「限界代替率逓減の法則」があてはまらないものです。
(学習上のアドバイス)
限界代替率については、①定義と②求め方の2つに分けて確認しておきましょう。①定義はそれほど難しくありませんが、②求め方はやや難しいので、次の計算問題とあわせて理解することをおすすめします。
(動画)【練習問題】ある個人の効用関数 U=X・Y (U:効用、X:X財の消費量、Y:Y財の消費量) について、この曲線上の点における限界代替率の求め方を示してください。[10:06]
0:00 効用関数「U=X・Y」
0:14 グラフを描いてみましょう
2:20 「限界代替率」の復習
3:31 限界効用の比の求め方は?
4:07 2つの変数があるので「偏微分」
4:26 「偏微分」とは?
5:10 偏微分のプロセス
7:38 限界代替率を求めると
8:07 数値を求めてみましょう
8:54 「限界代替率逓減の法則」
9:31 まとめ
(学習上のアドバイス)
簡単な例ですが、グラフの理解にもつながります。ぜひ、実際に書いて計算プロセスを確認してみましょう。理解できれば、おそらく、ミクロ経済学で、最初に「なるほど!わかった!」と実感する設問だと思います。
ここまではお買い物をするときの心の状態を表現しています。でも、実際には、「懐具合」(サイフの中身)と相談が必要です。これが「予算制約」です。
1-3-a.予算制約線
予算制約式の立て方を学びます。シフトの理由をマスターしてください。計算問題については1次方程式(直線)の理解が必要です。
予算制約線
(動画)予算制約線 [4:08]
- 0:00 「予算制約線」とは?…「予算制約線」は、「財の価格」と消費者の「所得」(予算)が与えられているとき、消費者が「最大限に購入可能な財の組合せ」を示します。
- 0:10 「予算制約式」を作る…この関係を式であらわしたものが「予算制約式」です。
- 1:17 グラフを描くために式を変形
- 2:35 グラフを描いてみましょう…「予算制約線」の「切片」は、「所得」を財の価格で割って求められます。横軸の切片は、「所得」を横軸の財の価格で割って求めた財の消費量になります。縦軸の切片は、「所得」を縦軸の財の価格で割って求めた財の消費量になります。
- 3:29 「傾き」は「価格比」…「予算制約線」の「傾き」は、財の「価格比」になります。
(学習上のアドバイス)
「式を作る → グラフを描くために変形 → グラフを描く(切片と傾きを確認)」という順番ですすめてみましょう。
満足感(効用)をあらわす「無差別曲線」と、サイフの中身をあらわす「予算制約線」をむすびつけて、実際の買い物がおこなわれます。これは、効用と予算の絶妙なバランスの上に成り立っています。このバランス感が「接点」のイメージになります。
1-3-b.最適消費点と効用最大化の条件
無差別曲線と予算制約線が接する点で、最適な消費量が決まります。このとき、効用は最大になります。効用最大化の条件は「限界代替率 = 価格比」(←絶妙なバランスがここで成り立っています)です。
(動画)効用最大化の条件 [5:47]
最適消費点
- 消費者は、与えられた「所得」(予算)制約の下で、自分の「効用」を最大化しようとします。
- この関係は、「無差別曲線」と「予算制約線」を結びつけることであらわすことができます。
- 0:00 無差別曲線
- 0:48 予算制約線
- 1:25 「限界代替率」と「価格比」
- 1:47 最適消費点…「無差別曲線」と「予算制約線」の「接点」では、効用が最大となる「最適消費量」が決定されます。このような「無差別曲線」と「予算制約線」の「接点」を「最適消費点」といいます。
効用最大化の条件
- 「最適消費点」では、「予算制約の下で効用が最大化」されております。このような状態(効用最大化)になる条件は、次の形であらわされます。
(効用最大化の条件)限界代替率 = 価格比
- 「限界代替率」は、「限界効用の比」で求められるので、こう書きかえることができます。
限界代替率 = 限界効用の比 = 価格比
これで、一定の予算のもとで、価格が与えられたときに、効用が最大となる消費量(需要量)を求めることができます。
(学習上のアドバイス)
効用最大化の条件「限界代替率 = 限界効用の比 = 価格比」については、実際に計算問題を解くことでさらに理解が深まります。
(次の考察)価格が変化すると消費量も変化することになるのですが、その前に、所得(予算)が変化するとどうなるかをみていきます。これが「所得の変化」です。予算制約線が平行シフトします。
ここまでは無料の動画です。
(有料動画)
『ミクロ経済学書き込みノート』の解説動画
テキストの『ミクロ経済学書き込みノート』をつかって説明していきます。
解説動画のご利用(レンタル)は動画配信サービスFilmuyからどうぞ。
1 消費者理論のあらすじ[05:38](これは無料サンプルです)
以下の解説動画のご利用(レンタル)は動画配信サービスFilmuyからどうぞ。
1-1.限界効用 [06:20](100円)
1-2.無差別曲線 [06:31](100円)
1-3.予算制約線 [06:13](100円)
1-1.限界効用 [06:20](100円)
1-2.無差別曲線 [06:31](100円)
1-3.予算制約線 [06:13](100円)
—-(次回の内容)—-
1-4.所得の変化 [16:11](200円)
1-5.価格の変化 [16:10](200円)
1-6.需要曲線と需要の価格弾力性 [09:31](100円)
1-7.さまざまな無差別曲線 [04:54](100円)