5-4.独占的競争 < 6-1.外部性 > 6-2.費用逓減産業
(学習の目的)
公害などの外部不経済の問題点を分析します。
外部性
ある経済主体の意思決定(行動)が他の経済主体の意思決定に影響を及ぼすことを「外部性」(externality:外部効果)といいます。
- 「外部性」のうち、他の経済主体にとって不利に働くものを「外部不経済」といいます。
- 「外部不経済」の例としては、「公害」があります。
- これに対して、他の経済主体にとって有利に働くものを「外部経済」といいます。
- 「外部経済」の例としては、「養蜂家と果樹農家」があります。
- ミツバチは作物の受粉の手助けをしてくれますので、果樹農家は受粉のコストを浮かすことができます。養蜂家はミツバチを飼育し、蜂蜜を生産するとともに、作物の受粉をおこなうことによって、間接的に果樹農家の生産活動を手助けすることになるのです。
私的限界費用と社会的限界費用
「外部性」については、とくにコスト面の分析が重要です。
- 「供給曲線」をあらわす「限界費用」(MC)曲線を2つにわけます。
- 「私的限界費用」(PMC)とは、「外部性を考慮しない限界費用」です。
- 「社会的限界費用」(SMC)とは、「外部性を考慮した限界費用」です。
「外部不経済」と「外部経済」では、これらの「私的限界費用」(PMC)と「社会的限界費用」(SMC)の大小関係が異なります。
外部不経済
「外部不経済」の場合、「社会的限界費用>私的限界費用」(SMC>PMC)となります。
- 企業が「社会」のことを考えずに、自分たちの利益のことだけを「私的」に追求した場合、「利潤最大化条件」は「価格=私的限界費用」(P=PMC)となります。
- よって、「市場均衡点」は「需要曲線」と「私的限界費用」(PMC)曲線の交点になります。
- これに対して、社会全体からみてのぞましい「パレート効率的」な資源配分は、「需要曲線」と「社会的限界費用」(SMC)曲線の交点で達成されます。
- 「余剰分析」をおこなうと、パレート効率的な資源配分では「総余剰」が最大となります。
- 「市場均衡点」と「パレート効率的」な資源配分がおこなわれる状態を比較すると、企業は社会的なコストを負わずに、低いコスト(私的限界費用)で生産をしていることがわかります。
- よって、「外部不経済」では「過剰生産」となります。
外部経済
「外部経済」の場合、「私的限界費用>社会的限界費用」(PMC>SMC)となります。
- 「外部不経済」の場合と同様に、企業は「社会」のことを考えずに生産をおこないます。
- 「利潤最大化条件」は「価格=私的限界費用」(P=PMC)となり、「市場均衡点」は「需要曲線」と「私的限界費用」(PMC)曲線の交点になります。
- 社会全体からみてのぞましい「パレート効率的」な資源配分は、「需要曲線」と「社会的限界費用」(SMC)曲線の交点で達成されます。
- このとき、「総余剰」が最大となります。
- 「市場均衡点」と「パレート効率的」な資源配分がおこなわれる状態を比較すると、企業は社会全体からみると高いコスト(私的限界費用)で生産をしていることになります。
- 「外部経済」では「過少生産」となります。
市場の失敗
企業が社会全体のことを考えずに行動した場合、「外部不経済」は「過剰生産」に、「外部経済」は「過少生産」になります。
- これは、「市場」に任せた結果として「最適でない資源配分」がおこなわれたことになるので、「市場の失敗」になります。
- この「市場」で解決できない問題をあつかうために、「政府」の役割が重要になってきます。
社会全体の利益のためには、政府が「パレート効率的」な資源配分が達成できるような「政策」をおこなう必要がでてきます。
ピグー的政策
- 「外部不経済」は「過剰生産」です。よって、生産を抑制させる必要がでてきます。問題を解決するために必要なコストを「租税」の形で課すことによって、「私的限界費用」(PMC)を「社会的限界費用」(SMC)まで上昇させます。
- このような税を「ピグー税」といいます。
- 「外部経済」は「過少生産」です。よって、生産を促進するために、「補助金」を出す方法が考えられます。これによって、「私的限界費用」(PMC)を「社会的限界費用」(SMC)まで下げます。
- このような補助金を「ピグー的補助金」といいます。
コースの定理
この他に、「外部性」による「加害者」と「被害者」が「自発的な交渉」をおこなって、「パレート効率的」な資源配分を達成することも考えられます。これを「コースの定理」といいます。
→次は「費用逓減産業」です。電気・ガス・水道などの大規模な産業です。
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