過去問をみながら、経済学の理解を深めていきましょう。

ある国のマクロ経済が、次のように示されている。
Y=C+I+G
C=0.8(Y-T)+42
I=20-100r
M/P=100
L=0.2Y-100r+50
Yf=300
〔Y:国民所得、C:消費、I:投資、G:政府支出、T:租税、r:利子率、M:名目貨幣供給、P:物価水準、L:実質貨幣需要、Yf:完全雇用国民所得〕
このとき、均衡財政を維持しつつ(G=T)、政府支出によって完全雇用を達成するためには、政府支出はいくらになるか。
 10
 20
 30
 40
 50

(平成27・国家一般職)

【解説】

出題テーマは何か?

  • 設問中に「マクロ経済」とあるので、マクロ経済学の問題。
  • 「国民所得」とあるので、まず、財市場についての知識が必要。
  • さらに、「利子率」とあるので、貨幣市場についての知識が必要。
  • 「物価」とか「完全雇用」ということばがあるので、労働市場についての知識も必要か?→それぞれ「定数」(数値)があたえられているので(物価はM/P=100、完全雇用国民所得Yf=300)、これは式に代入するだけでいい。
  • 財市場と貨幣市場をまとめて分析しているので、「IS-LM分析」の知識が必要。

何を答えればいいのか?

この設問で問われているのは、以下の数値です。

均衡財政を維持しつつ(G=T)、政府支出によって完全雇用を達成するためには、政府支出はいくらになるか。

つまり、「目標とする国民所得(Y)を達成するためには、どれだけ政府支出(G)が必要か?」という問題です。

必要な知識は?

正解をみちびくには、いくつかの知識が必要です。

当サイトではまだ「政府部門と海外部門をふくむモデル」について説明していないのですが、今ある知識だけで解いてみましょう。


【解答】

式が6個もあってややこしいので、3つに分類して、何を表しているかを確認します。

財市場:IS曲線をもとめる

Y=C+I+G
C=0.8(Y-T)+42
I=20-100r
〔Y:国民所得、C:消費、I:投資、G:政府支出、T:租税、r:利子率〕

(この内容は「1-4.国民所得の決定」と「3-2.IS曲線」参照)

「Y=C+I+G」は、財市場の需給均衡式をあらわしています。

  • Y・・・生産面(供給面)
  • C+I+G・・・支出面(需要面)

「C=0.8(Y-T)+42」は、消費関数です。

  • 定数の「42」は国民所得とは無関係に消費される基礎消費にあたります。
  • 「0.8」は限界消費性向です。
  • 「Y-T」は、可処分所得をあらわします。可処分所得とは、所得(Y)から税金(T)を引いたもので、実際に使える所得のことです。

「I=20-100r」は、投資関数です。

  • 「-100r」は、投資(I)が利子率(r)の減少関数であることをあらわしています。利子率が低いほど、お金を借りて投資をしやすくなるということです。

(どうすればよいか?)

財市場の需給均衡式「Y=C+I+G」に、
消費関数「C=0.8(Y-T)+42」と
投資関数「I=20-100r」を代入して整理します。

Y=〔0.8(Y-T)+42〕+(20-100r)+G
Y=0.8Y-0.8T+42+20-100r+G
Y-0.8Y=-0.8T+62-100r+G
0.2Y=-0.8T+62-100r+G

これは、財市場が均衡する国民所得(Y)と利子率(r)の組合せをあらわしています。IS曲線をもとめることができました!両辺を0.2で割って「Y= 」の形にするとすっきりしますが、ひとまずこのままにしておきます。

貨幣市場:LM曲線をもとめる

M/P=100
L=0.2Y-100r+50
〔M:名目貨幣供給、P:物価水準、L:実質貨幣需要〕

(この内容は「3-3.LM曲線」参照)

「M/P=100」は、実質貨幣供給をあらわします。

  • M・・・名目貨幣供給
  • P・・・物価水準
  • 「M/P」は「物価を考慮に入れた貨幣供給」つまり実質貨幣供給です。

「L=0.2Y-100r+50」は実質貨幣需要です。

実質貨幣供給と実質貨幣需要の式がそろったので、「貨幣市場の需給均衡式」としてあらわすことができます。

  • 「L(実質貨幣需要)=M/P(実質貨幣供給)」

(どうすればよいか?)

貨幣市場の需給均衡式「L=M/P」に、
実質貨幣需要「L=0.2Y-100r+50」と
実質貨幣供給「M/P=100」を代入して整理します。

0.2Y-100r+50=100
0.2Y=100r+100-50
0.2Y=100r+50

これは、貨幣市場が均衡する国民所得(Y)と利子率(r)の組合せをあらわしています。LM曲線をもとめることができました!これも、両辺を0.2で割って「Y= 」の形にするとすっきりしますが、ひとまずこのままにしておきます。

IS曲線とLM曲線

ここまでを整理してましょう。

IS曲線
0.2Y=-0.8T+62-100r+G
国民所得(Y)と利子率(r)の間に「マイナス」の関係があります。IS曲線は右下がりになります。

LM曲線
0.2Y=100r+50
国民所得(Y)と利子率(r)の間には「プラス」の関係があります。LM曲線は右上がりになります。

IS曲線とLM曲線の交点では、財市場と貨幣市場が均衡する国民所得(Y)と利子率(r)が求まります。

ただし、この設問では「目標とする国民所得(Y)を達成するためには、どれだけ政府支出(G)が必要か?」を求めれば十分です。よって、利子率(r)が等しくなると考えて、国民所得の値を求めましょう。

IS曲線
0.2Y=-0.8T+62-100r+G
100r=-0.2Y-0.8T+62+G
LM曲線
0.2Y=100r+50
100r=0.2Y-50

双方ともに「100r=」の形になっていますので、
-0.2Y-0.8T+62+G=0.2Y-50
-0.8T+G=0.2Y+0.2Y-50-62
-0.8T+G=0.4Y-112 となります。

これは、財市場と貨幣市場が均衡する条件のもとで、国民所得(Y)と租税(T)および政府支出(G)の関係をみたものになります。

均衡財政を維持

達成したい国民所得
Yf=300
〔Yf:完全雇用国民所得〕

目標とする国民所得(Y)の水準は、「Yf=300」でしめされています。

これをさきほどの式に代入してみましょう。
-0.8T+G=0.4Y-112
-0.8T+G=0.4・300-112
-0.8T+G=120-112
-0.8T+G=8

ところで、この設問ではこう問われています。

均衡財政を維持しつつ(G=T)、政府支出によって完全雇用を達成するためには、政府支出はいくらになるか。

均衡財政とは「G=T」ということですので、これを代入します。
-0.8T+G=8
-0.8G+G=8
0.2G=8
G=40
これが正答になります。

【正解】
 40